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The President & Principal 総長・学校長のことば

総長・学校長のことば

田中 愛治

早稲田大学総長

―「学びの本質」を希求し世界に貢献するグローバルリーダーを目指して―

 今日の世界は、また日本社会は人類の歴史上で最も早い速度での変化を経験しています。しかし、おそらく将来の時点から振り返れば、現在よりも遅いスピードで変化していく時代はもう来ないのではないでしょうか。それほど、人類の科学技術や生活における変化は加速しています。また同時に、第2次世界大戦後の歴史の中では、今日ほど世界の文明が衝突し、政治も経済も混沌としている時代はないでしょう。しかし変化を恐れてはなりません。
 早稲田大学の創設者である大隈重信は、「進取の精神」つまり継続する変革の重要性を唱え、さらに「人間は社会の利益のために存在する」として、世界に雄飛、貢献する人材の育成を目指しました。その理念は「一身一家一国家のためのみならず、進んで世界に貢献する抱負を持つべし」という大隈の言葉にあるように、早稲田大学では世界の問題に果敢に挑戦する精神に支えられた「たくましい知性」の育成をめざしています。そのために、13の多彩な学部による専門的な教育・研究と全学共通の基盤教育など体系的な教育環境を充実させています。さらに、早稲田大学は世界のトップクラスの大学になるという決意をかため、将来への明確なビジョンを掲げ、教職員、学生、校友の皆様の力を結集して、研究と教育における国際競争力を高め、「世界で輝くWASEDA」の実現という目標を新たに定めました。
 アジア経済の一翼を担うシンガポールは、1965年の独立以来、積極的に外国資本を誘致し、人材育成を推進することで金融・貿易の拠点としての国際的地位を確立してきました。多くの困難を克服して経済成長を成し遂げたシンガポールの戦略に、私は本学の理念と通じるものがあると考えます。早稲田渋谷シンガポール校の皆さんは、人間と世界と文化の結節点であるこの地で、多くの異文化理解活動や実践的な英語教育といった貴重な学びを得ることになるでしょう。この環境を活かして、「しなやかな感性」を育んでいただき、日本社会を外から見て、世界の中の日本として位置づける視点を持ってください。
 これらが「学びの本質」に結びつくと思います。ぜひこの優れた環境を最大限に活用して、人類が直面する答えのない問題の解決に向けて努力する高い志を持ち、世界平和と人類の幸福の実現に貢献するグローバルリーダーとなることを目指してください。早稲田大学は夢を追って学び続ける皆さんに最適の環境を提供し、これからも進化し続けます。

田中 愛治 総長略歴

校長 篠原 初枝

早稲田大学系属
早稲田渋谷シンガポール校

―21世紀に羽ばたく国際人としての学び―

 ここシンガポールの地で3年間の高校生活を送ることは、意義深く貴重な時間と経験です。早稲田渋谷シンガポール校では、日本の高校教育と同等の教育カリキュラムを学習します。日本国内の附属校・系属校と同様の教育水準を維持し、高校3年間で学ぶべきことを着実に習得することは、生徒の皆さんの知的な成長を促し、その人間性形成のためにきわめて大事なことです。高校で学ぶことは、単に大学進学に必要な知識ということではなく、長期的には、皆さんの思考力・集中力・判断力といった今後の人生を実り豊かに生きていくために必要な知性を形成する土台となるからです。
 さらに当校ではこのシンガポールという立地を活かし、特色ある教育プログラムを実施しています。国際都市シンガポールにふさわしく英語教育に力を入れ、たとえば「時事英語」のクラスでは、シンガポールや世界で起きていることを題材にして生徒が学び議論をしています。また、国際教育にも力をいれており、多文化社会シンガポールから学ぶ「異文化理解活動」のプログラムも設けられています。地元の高校との交流や、シンガポール国立大学の大学生との交流プログラムも実施されています。
 このように特色ある本校の教育が目指すところは、「国際人」、「グローバル・リーダー」の育成にあります。「国際人」とは、変化する世界の潮流を読み取り、その流動的な世界の状況に対処し、他者を理解しつつ「自己を確立」し考え行動できる人材です。この教育プロセスは、また同時に「国際人」に求められるあるべき姿、すなわち「倫理」を持った人材を育成する過程です。何が正しく何が正しくないのかといった「倫理」は、時代や場所を超えて通用するものであり、本校では授業や色々な課外プログラムによって「しなやかで強い」人間性を培うことをめざしています。
 本校が掲げてきた「自調自考」とは、自らが主体的にいろいろな事象や他者を理解し考察し、その上で自分の考えを表現し実行する精神と行動に他なりません。自ら主体的に考え行動し、積極的に自己を確立していくという精神は、早稲田大学が唱えてきた「進取の精神・学の独立」につながるものといえます。
 21世紀がアジアの世紀といわれる中で、シンガポールは、そのアジア発展の一翼を担う重要な拠点です。グローバル化が進む世界の中で、世界という舞台で強くしなやかに羽ばたく学生の育成を、早稲田渋谷シンガポール校はめざします。

校長略歴

1993年 恵泉女学園大学人文学部 助教授
1998年 明治学院大学国際学部国際学科 助教授
2003年 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 助教授
2004年~現在 早稲田大学大学院アジア太平洋研究科 教授
2020年 早稲田渋谷シンガポール校校長